1. 普段と同じルーチンなのに、上がらない数値
インスリンの単位数も、食べた食事の量も、いつも通り。それなのに、今日の血糖値は驚くほど低空飛行を続けています。 「おかしいな」と思いつつ、体に目を向けると、昨日数ヶ月ぶりに再開したランニングによる「ひどい筋肉痛」がありました。実は、この筋肉痛こそが、私の血糖値が上がらない最大の理由でした。
2. 枯渇した「筋肉のタンク」を埋める作業
運動中だけでなく、運動が終わった後も私たちの体は糖を消費します。 久しぶりのランニングで、私の筋肉に貯蔵されていた糖(筋グリコーゲン)は、ほぼ空っぽの状態になりました。 運動を終えた後、体は必死にそのタンクを補充しようと、血液中のブドウ糖を猛烈な勢いで筋肉に取り込み始めます。この「筋グリコーゲンの再合成」は、運動後24時間以上にわたって続くことがあります。
3. インスリンの「効き」が劇的に良くなる時間
さらに、運動によって筋肉内の糖輸送体(GLUT4)が活性化し、「インスリン感受性」が高まります。 つまり、いつもと同じ1単位のインスリンが、いつも以上に効率よく糖を細胞へと運び込んでしまうのです。 薬剤師として知識では知っていましたが、自分自身の数値がこれほどまでに「運動の威力」を証明していることに、改めて驚かされました。
4. 筋肉痛という「修復」のエネルギー
筋肉痛があるということは、筋繊維が微細なダメージを受け、今まさに修復されている最中です。 この修復プロセスにもエネルギー(糖)が必要です。 「空になったタンクへの補充」と「損傷した組織の修復」。このダブルパンチによって、私の血液中の糖は、食後であっても行き場を失うことなく筋肉へと吸い取られていたのです。
5. 「運動後遅発性低血糖」への警戒
この「血糖値が上がりにくい状態」は、糖尿病管理においてはメリットでもありますが、同時に「運動後遅発性低血糖」というリスクも孕んでいます。 特に注意が必要なのは、運動から数時間から十数時間後、つまり「今夜の睡眠中」です。 筋肉が黙々と糖を吸い取り続けている今、いつも通りのインスリン量では効きすぎる可能性があります。
6. 「上がらない」時に備える3つの低血糖対策
筋肉痛がある間は、特に以下の3点に注意して過ごしています。
- 「寝る前」の補食を惜しまない 就寝中は筋肉の修復(糖の取り込み)がピークに達し、最も低血糖になりやすい時間帯です。血糖値が低めで安定しているなら、寝る前にあえて少量の糖質(ビスケットや少量の果物など)を摂り、夜間の「逃げ道」を作っておくのが安全です。
- インスリン量の微調整(主治医との相談範囲内で) 「いつもと同じ単位数」が「今の体には多すぎる」可能性があります。もし低血糖(70mg/dL以下)を繰り返すようなら、主治医に相談の上で、運動後のインスリン単位数をあらかじめ減らす調整を検討します。
- 枕元の「レスキュー糖」を再確認 「上がらない」という安心感は、裏を返せば「急降下」のリスクでもあります。夜中に低血糖の症状(冷や汗や動悸)で目が覚めたとき、すぐに手が届く場所にブドウ糖やラムネがあるか、今一度確認しておくことが大切です。


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